西尾維新【悲鳴伝】感想とあらすじ。新たなヒーロー誕生。
今回は、西尾維新さんの著作【悲鳴伝】の感想を書いていきます。
感想なのでネタバレをがっつり含みますが「それでもオッケー!」って人はどんどん読んでやってください。
あらすじはネタバレを極力さけて簡潔に書いてますので、まだ【悲鳴伝】を読んだ事が無い方はあらすじだけでも読んでみてください。
それと、ネタバレを極力さけた【悲鳴伝】に登場するキャラクターをこちらの記事で紹介しているので、ご覧ください。
関連記事:『西尾維新【伝説シリーズ】キャラクター紹介Ver悲鳴伝』
そして、興味があれば、書店へダッシュです。
では、いきましょう。
【悲鳴伝】あらすじ
ある時、全世界に鳴り響いた【悲鳴】により、世界の人口が3分の2まで減らされた世界。
人類はその【悲鳴】が地球からの攻撃だとし、ここに人類VS地球の戦いが幕を開ける。
世界中に数多く存在する【対地球組織】で日本を本拠地にする【地球撲滅軍】はある少年に目をつける。
少年の名前は空々空(そらから くう)
彼に英雄の素質があると判断し、【地球撲滅軍】へと勧誘する。
「人類を滅ぼそうとする悪しき地球と戦うヒーローになってください」
こうして、【地球撲滅軍】へと入隊し、地球と戦う空々空。
ただただ生きる為に。
これは全く新しい英雄譚。
西尾維新【悲鳴伝】感想
新しいヒーローとは
本作の主人公である空々空は何が起ころうと動じず全てを受け入れてしまえるわけです。
家族、友人知人、些細な関わりをもった全ての人間を失ってもそれを受け入れてしまう、そんな異常な人格の人物をヒーローにしようというこの話は、何とも言えない気持ち悪さの様な物を私に与えました。
仮に自分が同じ状況になったら・・・と考えずにはいられませんでした。
とは言え、冒頭の空々と飢皿木博士とのカウンセリングでもあった通り、何か災害などが発生した際に自身の感情を後回しに出来るそんな人物が、復興の一役を担っているのもまた真実だと思います。
何ともやりきれない、せつない感情が込み上げてきました。
世間一般でヒーローと言うと、仮面ライダーやウルトラマンを連想すると思います。
しかし、空々はそんな世間一般のヒーロー像からはかけ離れています。
彼が活躍する事で救われるものとは一体なんなのか。
自分自身?それとも他者?
物語の続編が気になります。
地球vs人類
この【悲鳴伝】は地球と人類の戦いをメインに置いた話なわけです。
地球陣と呼ばれる地球が人類滅亡の為に送り込んできた言わば敵に当たる存在が、見た目が人間で地球陣本人も自分を人間だと思って生活しているという設定なわけですよ。
そして、それを見分けられるのが特殊なアイテムを使った場合の空々だけ。
つまりは外から見た際は、人間と人間が闘っている、あるいは一方的に殺害しているとしか見えないわけです。
空々は初任務で地球陣を1体倒したんですが、その戦いが何ともショボイ。
透明になれるというスーツを着て背後からそっと近づき、相手がしゃがみこんだ瞬間に頭を踏みつける。
なんともあっけない結末です。
【悲鳴伝】で空々が自身の手で地球陣を倒すのはこの一回だけなわけですが、これを戦いと言っていいのかどうか・・・。
判断の分かれるところですよね(^^;)
狼ちゃん
剣藤のペットとして登場した彼女が私は結構好きでした。
- 人体実験の犠牲者で空々以外には犬に見える彼女が剣藤と一緒にいた理由。
- 「あの牛乳はおいしいんだ」というセリフ。
何とも胸に響いてきましたね。
自分は自分のままでいたい、未来を見つめると言う意志には目を見張るものが有ります。
そして、そんな彼女をあっさり退場させてしまう西尾維新さん。
登場人物をどんどん消費するという彼の本領発揮でしょうか。
狼ちゃんと空々空は案外良きタッグになりそうと思っていただけに悲しい・・・。
空々空の気遣い
まず一つ目。
狼ちゃんが実は人間だった、そして狼ちゃんを失い、夜うなされる剣藤に対して空々は
『僕を抱いてください』
と言うわけです。
もちろん抱きしめて寝てくださいという意味ですよ。
この台詞からは空々のマニュアル通りの行動という一面が見えてきませんでした。
ネット上ではいろんな意見が有ります。
でも私は、剣藤の事が心配で思わず出た彼の気遣いだと私は感じました。
そして二つ目。
幼稚園にまぎれた地球陣退治の際に空々は共に行動している剣藤と花屋に対してある嘘を付きます。
幼稚園にいる全ての人間が地球陣だと言う嘘。
対象となる人数は50人ほどでその中から地球陣だけを選んで倒すのは剣藤、花屋共に不可能。
そして、空々は狼ちゃんの一件で剣藤の弱さを知っています。
花屋は友人。
そんな二人の心労を軽くする為についたと思われる嘘です。
こちらからも私は空々を感情が死んでいるとは思えませんでした。
空々も成長していると感じた瞬間でした。
ただ、この嘘が花屋の凶行の原因となったのは何ともやるせない限りです。
地球との遭遇
剣藤、花屋による幼稚園児襲撃の陰で、空々は地球と名乗る少年と遭遇しましたね。
あまりに突然の登場に空々とシンクロして驚きました。
そして、たたみかけるように二回目となる「大いなる悲鳴」の発動宣言。
そんな衝撃の事実を告げる地球少年に対して「気温を涼しくしてもらえると助かります」とお願いする空々。
なんじゃそりゃ!?動じなさすぎで頼もしい!
それにしても【悲鳴伝】は「人類vs地球」を主軸に置いているわけですが、どうなれば人類が勝利した事になるんでしょうね?
人類が滅びれば地球の勝利。
では、人類の勝ちは?
そして最後は一人
空々のついた嘘が原因で花屋が剣藤を排除しようとするわけですが。
花屋の空々に対する感情が難しいですよね。
ヤンデレっぽくもあり、そもそも空々と剣藤の同居を薦めたのが彼女なわけですが、同居に対して嫉妬するとかどんだけ破綻してるんだって話ですよ。
コワイ。
そして、ピンチの剣藤を救う為に颯爽と現れる空々。
ここで同じ第九機動室の戦士を殺害しているわけですが、この時の空々はヒーローっぽいですね。
一人の女の子を救う為に戦う。
花屋との戦闘においては彼女との友情を信じての勝利。
まあそもそも花屋に空々を傷つける意図はなかったので戦闘と言っても頭脳戦のようなものでしたね。
そして瀕死で口がきけないはずの剣藤との会話。
ここでまさか狼ちゃんの形見である共鳴環が役に立つとは思っていなかったのでその演出に震えました。
空々の家族を殺した事を後悔していた剣藤の最後の頼みで彼女にとどめを刺す空々。
剣藤に対して本心から「ありがとう」と言えた瞬間には胸が熱くなりました。
でも、剣藤と狼ちゃんには生きていて欲しかったですね。
空々を合わせた3人トリオってのも見たかったです。
最後に
【悲鳴伝】の感想や評判を色々見てみると賛否両論って感じですね。
ただ私の感想としては読み始めに気持ち悪さを感じたものの、読み進めているうちに引き込まれ、気が付けば読み終わってましたね。
空々本人にもわからない行動に、彼の感情の様なものを感じて嬉しくなりました。
【悲鳴伝】では内輪揉めって感じでしたが、これからの地球との戦いやその結末には今から興味が尽きませんね。
この【悲鳴伝】から始まる西尾維新さんの【伝説シリーズ】ですが、未読の方は読む順番が解らないと思いますので、それについてはこちらの記事をご覧ください。
関連記事:『西尾維新【伝説シリーズ】読む順番はココで丸分かり』